農漁業が中心であった時代は、雨や風を予想することもできず、その背後に何か大きな力が働いていると感じていました。
自然の猛威を畏れて、また自然の恵みに感謝をしていました。一方、現代では仕事や生活も多様化し、神様や自然に畏敬の念を抱く人は少なくなりました。
宮古島の北にある大神島は、周囲2.7km、海抜は74.5mで、富士山のように美しい形で、エメラルド色の海に静かに浮かぶ小さな島です。
大神が降りる島で、神が宿ると言われています。宮古島の人々は子供の頃から大神島は神聖な場所で、近づいてはいけないと教えられています。
私は、藤枝市との友好都市である宮古島市に時折訪問し気になる大神島でしたが、この教えを聞いて渡ることを躊躇していました。
ある年の4月、11時に宮古島の島尻港で出航を待っていると、地震による津波注意報が発令されました。島の神様が認めない訪問者は、天候などに阻まれ渡れないと聞いていました。
幸い1時間ほどして津波注意報は解除され、出航することになりました。躊躇は期待へと変わっていき、島に受け入れていただいたと思いました。
15分で海を渡り、唯一の民宿・食堂「おぷゆう」のおじさんに案内していただきました。
島の中腹に民家が軒をならべ、22人が住んでいます。
遠見台(とおみだい)のてっぺんには大きな岩があり、そこへ神様が降りてくるそうです。
この岩に降りてくる神様が島の老女、司ンマ(ツカサンマ)と呼ばれる神女役に6月〜10月の間、どの時期にどんな神事を行うかを伝えるそうです。
司ンマは、月平均4日間島中の御嶽(ウタキ)で唄を歌いながら周り、全く食事を取らず祈祷を捧げます。
秘祭である祖神祭(ウヤガン)が続けられています。
神祭行事の日は島への立ち入りは禁止され、島の男性も聖域には入ることができません。
島そのものが神様であり、重機で道を造り自然を壊すことはもちろん、石や草木を持ち帰ったりすることできません。
宮古島の人々にとって、大神島は今も神様や自然に畏敬の念を抱く聖地であり続けています。
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